ヒマつぶし情報
2019.05.22
以心伝心なお笑いコンビ【かもめんたる】の二人が淡々とつぶやく。
『キングオブコント』の覇者としても知られる、実力派お笑いコンビ、かもめんたる。
近年では”劇団かもめんたる”なる、俳優陣を迎えての舞台公演も話題となっている。
そんな独自の活動を展開する二人が、若者たちへ伝えたい愛のメッセージとは!?

── そもそも、お二人の馴れ初めは?
う大「槙尾とは大学が一緒で同じお笑いサークルに所属していて、卒業後はWAGEという5人組のグループを組んでいたんですね。
で、解散後にコンビとして活動し始めました」
槙尾「僕が誘ったんですよ。」
── なるほど。それが【劇団かもめんたる】の前身とも言えるわけですね。
う大「そうですね。
数年前に、事務所の先輩であるカンニング竹山さんから、『お前ら、他の人も迎えて劇団やったら?』と勧められたんです。
で、それもいいなと定期的に始めました」
槙尾「もともとは、200人からのオーディションで選んだ人たちと組みまして。
次回の7回目公演では、俳優の八嶋智人さんも出演してくれることになりました」
う大「八嶋さんとはなかなかスケジュールが合わなくて、延び延びになっていたのですが、いざ決まったら、プレッシャーしかありません(笑)」
── さて、そんな実力派俳優をも巻き込んでしまう、お二人のコントにおける演技力にも定評があるわけですが、演技はそもそもお好きだったのですか?
槙尾「僕は高校生のころから俳優になりたくて俳優養成所にも通いましたし、大学では演劇学科に進学しました」
う大「演技なんて最初は恥ずかしかったのですが、コントにおいて演技力はやっぱり大事だなと気がついて、ワークショップに通ったりしていましたね。
コントって、演技をしっかり身に付けるとお客さんのウケもいいし、安定するんですよね。
自分で作るコントって、作・演出・プレイヤーが全て自分たちなんで、一番ロスがないはずのものなんです。
でも、せっかく面白いネタを思いついたのに、お互いに演技力がないとそこにロスが生じる。
それはもったいないなと」

── 深いですね! どんな分野や職種にも、ロスは少ないほうがいいですものね。
う大「お互い、やりやすいことをやるのもミソです。
得意なことしかコントではやっていないです。
苦手なことをわざわざ作ってもしょうがないですからね。
相方が演じられなさそうなことは、書かないですし」
槙尾「いつも、僕の素の部分を意識して書いてもらっているんで、助かっております(笑)」
── コントも含めた、う大さんの脚本の〝狂気?を含んだ独特の世界観はどこから生まれるのですか?
う大「そもそもホラーやSFが好きなのですが、メッセージ性なんて何もないんですよ(笑)。
タイトルを先に決め、それにつじつまを合わせて後から中身を考えるパターンが多いです。
例えば次回公演の『宇宙人はクラゲが嫌い』というタイトルも、何となく決めまして。
ああ、宇宙人って、昔からクラゲみたいな見た目でイメージされがちだけど、その宇宙人自身がクラゲが嫌いだったらどうなんだろう? という後付けの発想からなんです。
タイトルの”嫌い”が転じて”好き”な方向にも持って行けますし。
そうやって、思いついたフレーズをこねくり回すのが、僕の好きな作り方です。
あと、二人のコントでは人数的や時間的にできないことをやれる面白さは、劇団にはありますね」
槙尾「コントの延長線上でもあるので、当然、笑える要素は踏まえて書いてもらっているところも相方としては、注目してほしいです」
やりたいことをとりあえずやれば違う選択肢も広がるんじゃないでしょうか
── お二人のコントは、”笑い”だけでなく”悲鳴”も起こりますよね。
う大「”いい悲鳴”の時は、快感なんですよ。笑いと悲鳴の相乗効果が起こっている時は」
槙尾「拒絶反応だけの悲鳴は、ちょっときついですねえ」
う大「そういうお客さんを笑わそうとは、その時点では思えないから、そのまま突き進みます(笑)。
どっちもいい具合に体感してもらえたら、ありがたいですね。
ただ、笑いのツボが違うのはしょうがないとも思いますので、こちらから軌道修正することはないです(キッパリと)。
あと、怖がらせようとはそもそも思ってはいないのですが、ある人物のことを突き詰めていくと、結果的にホラー的な要素が含まれていったというか」
── 個人的には、コント『ヒッチハイク』における、「冗談どんぶり~」というフレーズと、不気味なオチがツボにハマり、繰り返し観ております(笑)。
う大「ありがとうございます(笑)。
あれはまさに洋画でもよくある”誰かが密室で、悲劇に巻き込まれるシチュエーション”ですね」
槙尾「どんな心境の時に観ているんですか?」
── いや、なぜか落ち込んだ時に。
槙尾「あのネタに、そんな活用法があったんですね(笑)!」
── さて、う大さんは、『マイデリケートゾーン』などの漫画も描かれているとか。
う大「100万部売れると思っているわけではないのですが、まだまだ、コアな読者に届いていないなと。
漫画界の権威たちが僕を脅威と思っているからじゃないかと」
槙尾「いや、思ってないでしょ(笑)!」
う大「そもそも、八嶋さんが『う大くんの漫画が、面白い!』と、ツイッターでつぶやいてくれたことがきっかけで、今回の劇団公演でも共演することになったのに。
もうちょっと話題になってもいいと思っていまして。
漫画界って、黒船を恐れているのかと。
鎖国状態なんですかねえ? 大砲撃っちゃうよ~と」
槙尾「撃てばいいじゃないですか(笑)」
── アハハ! でも、出版業界の中では確実に話題になっていますよ。
ちなみに有名漫画家のⅠ原さんも絶賛していて、「よろしくお伝えください」とのことです。
う大「本当ですか!?それは、嬉しいなあ~」
槙尾「よかったねえ(笑)」

── そんなやりたいことを実践しまくっているお二人から、例えば自分の夢を親に伝えられないような若者たちに、何かアドバイスはありますか?
槙尾「僕はやりたいことはガンガンやってきた方なので、親にも『自分が本当に好きでやりたいんだ』という気持ちを伝えれば、きっと納得してくれるんじゃないですかねえ。
もちろん、家庭にもよりけりだと思いますが。
一回サラリーマンをやってから、やっぱり芸人をやりたいと夢を捨てられずにこっちの世界に来る人もちらほらいるんですよ」
う大「今はもう、同じ会社でずっと安定して生きられる時代じゃないですし、親も、自分が思っているほど反対しないんじゃないですか(笑)?
僕も子供ができてから思うのは、向き不向きは親にもわかるんじゃないかなと。
うちの親も僕がサラリーマンに向いているなんか思ってもいなかったみたいですし、芸人になった時も、そりゃそうだろみたいな感じでしたよ。
それこそ今なんて、もう、自分の夢なんて親にも言わなくていいんじゃないですか(笑)。
一人一人が自分を大事にしていくことが、社会のエネルギーになっていくんじゃないでしょうか。
時代もどんどん変わってきてますし。
しかし、これから日本はどうなるんですかね?」
槙尾「話が壮大だよ(笑)!」
── 最後に「これだ!」と思える仕事を見つけるコツって、ありますかね?
う大「自分の適材適所の仕事に就けるには、〝行動?しかないと思うんです。
例えばバンドを組んでみて、やっぱ向いてないなと思って悩んでいたら、音響さんなどの裏方に興味を持って、そっちの仕事に就いたなんて人もいます。
それも、そもそも好きなことをまず始めたからだと思うんですね」
槙尾「選択肢はまず、好きな世界に飛び込んでからですね。
僕も俳優になりたかったけれど、う大さんに出会って、『この人、面白いなあ~、一緒にいたいなあ~』と思った結果が今ですから」
なんとも美しい言葉を言い放つ槙尾さんと無言で照れ笑いをする、う大さん。
”好きなこと””惹かれる人”を追い求めれば、自然と道はひらかれるのではないかと、悩んでいる人にも悩んでいない方々にも響いたのではないでしょうか!
(取材・文/山崎光尚 撮影/宮城夏子)

岩崎う大(右/主にボケ担当)&槙尾ユウスケ(左/主にツッコミ担当)のお笑いコンビ。
『キングオブコント2013』優勝。う大が書く狂気じみたホラーテイストの脚本、槙尾が時折見せる女装した役柄のコントで知られる。

本記事はVVmagazine vol.58に掲載されたものの転載です。